SFマガジン2005年7月号 感想
特集は「ぼくたちのリアル・フィクション2」。リアル・フィクションとは何かと言うと、「”現実=リアル”と格闘する小説・コミック」のことらしい。巻末のブックガイドに挙げられている作品は、「リアリティが変」という特徴でくくることができるので、わりと的確なネーミングかも。
特集の小説が四本にコミックが一本。巻頭の、「アンジー・クレーマーにさよならを」(新城カズマ)はクライマックスで鳥肌が立った。古代スパルタの話は別にいらないと思うが、ギリシャ神話を知っている人には面白いのかも。
「遊星からのカチョーフーゲツ」(桜坂洋)は前作「さいたまチェーンソー少女」程のインパクトはないものの、相変わらず、構造自体は真っ当なのに、登場人物の行動があまりに極端なため、起こることはへんてこであり、にも関わらず、真っ当な構造からなんとなく真っ当っぽい結末が捻り出されてしまう所がいかす。
「野天の人」(平山瑞穂)は純文学であり、言語化される以前のもやもやを描くのが抜群に上手い。
「零式〈前編〉」(海猫沢めろん)は初期の秋山瑞人さん的読者おかまいなしに突っ走るぜ感がなつかしい。
「宇宙色のブーケ」(西島大介)は泣いてしまった。たった16頁で泣かせるなんて、さすがただ者じゃないぜ。
で、特集で一番面白かったのが「笠井潔×山田正紀 対談 戦後文学からオタク文学へ〜団塊世代の日本SF史〜」。お二人とも五十代なので、これまで読まれて来たものの蓄積が大きく(なので笠井さんの「冲方丁や秋山瑞人を初めとするSF有力新人のオタク的、セカイ系的な発想を準備したのは、神林君や野阿君や大原まり子などの世代」というような歴史を踏まえた考察ができる)、思考力、分析力などでは遥か高みにおられるのだけれど、にも関わらず、「今」読んでいるものや感じていることは私とほぼ同じであるということが嬉しい。大人にならないで良いのかという問いは、私にとってわりと考え込ませる問いなのだけれど、山田さんが「つまり、彼(小松左京さん=筆者注)には三十代ですでに、自分は大人になってしまった、という自覚がある。対して我々は、五十になろうが六十になろうがそういう自覚がないんですよね。」とおっしゃっているのを読んだら、自分も五十になろうが六十になろうがライトノベルを読んでるんだろうな、とすんなり将来を受け入れられた。
特集外では、田中哲文さんの「罪火大戦ジャン・ゴーレ」がすごかった。かなり変な話でありながら、骨太で王道の香りがする所が素晴らしい。
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