ダ・ヴィンチ2005年9月号 感想





 ダ・ヴィンチが巻頭特集「ライトノベル読者はバカなのか?」をやると知った時、教会のことを思い浮かべた。白人専用教会が奴隷解放の日に近所の黒人の少年を招いてミサをやる。そして牧師さんが「差別をしてはいけませんよ。」と説教をするのだ。
 毎月数百冊の本を紹介しながら、ライトノベルレーベルの本はめったに登場しないダ・ヴィンチの特集ということで、かなり意地悪な気持ちで読みはじめた。だが、読後は評価が一転していた。
 そうだ、これだよ。これが必要なんだよ。
 ライトノベル関連本が沢山出版されたのだが、どれもライトノベル読者が読んで楽しむための本だった。だが、これは普段ライトノベルを読まない人にライトノベルを読んでもらうために様々な工夫をしている。まずは銀色夏生風に写真の横にライトノベル中の詩的なフレーズを重ねて掴みは十分。
 続けて村上春樹、村上龍、角田光代、綿谷りさの作品が好きならそれぞれこれを読め、と具体的に提示する。セレクト自体は首をかしげるものもあり、例えば角田光代と「狂乱家族日記」なんてテーマが家族であることが共通するだけで、方法論が正反対じゃないか、とか。「世界の中心で愛を叫ぶ」が好きな人には「イリヤの空、UFOの夏」「半分の月がのぼる空」「ロボット妹」がおすすめ、みたいなもっと近接した作品を挙げた方が良いのではないか。とは言えアプローチは上手い。自分と好きな作家とつながっていると言われたら私も読んでみようかと思うもの。
 続けてライトノベルへの偏見に作家が答えるという形でのインタビュー。ライトノベルファンとしてはもっとじっくりインタビューして欲しい所だが、非ファン向けなのでしょうがない。
 続けてライトノベルを読んだことの無い人にライトノベルを読んでもらう企画。「本の雑誌2001年2月号」の北上次郎さんに無理矢理ライトノベル11冊を読んでもらう企画もそうなのだが、他者の目が入ることでライトノベルが客観的に位置づけられて面白い。イリヤはそう言えば学園恋愛物だったんだなあとか。一巻だけを読んだ感想は概ね好評だったのですが、あの持ち上げてズガン、持ち上げてはズガン連打の四巻が受け入れられるかに興味がありますね。
 最後は三村美衣さんの現実−非現実とユーモア−シリアスの二軸チャートで締め。

 全体的に文章は短く、おしゃれにキャッチーにという方針が貫かれている。私からするとダ・ヴィンチは読むところが少なくて掘り下げが浅い雑誌という印象で、タレントに好きな本を語らせたりしているのを、本をおしゃれアイテムみたいに扱ってからに、と馬鹿にしていたのだが、これはライトノベルを馬鹿にしている人の裏返しに過ぎなかったと気付き、反省した。ダ・ヴィンチの方法論は物書きとして読者に読ませる方法論として応用できるしね。

 連載陣では「爆笑問題の日本史原論」を毎月立ち読みしています(済みません)。コメディアンとしては固いイメージがついて不利なのにあえてこういう連載をやるのはえらいと思う。



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