複雑な方へ――ヱヴァンゲリヲン新劇場版破感想
(ヱヴァンゲリヲン新劇場版破の抽象的なネタばれを含みます)
行動すれば世界は変わる。
ヱヴァンゲリオン新劇場版破で最も印象深かったのがこのことだ。
序では基本的にはTV版を踏襲していたストーリーが破で大きく変わった。それも、どうしようもない世界の事情でではなく、ささやかなキャラクターの行動によって変わったのだ。
エレベータ内でのレイとアスカのシーンの変更が印象的だ。TV版では、人と人は結局分かり合えないという虚無的な価値観によって貫かれていたが、新劇場版は、強く求めれば気持ちは通じるという前向きなメッセージによって貫かれている。そこがすがすがしい。
新劇場版破のもう一つのキーワードは「複雑」だろう。加持がシンプルな生命のいない赤い海よりも、複雑な生命の腐った匂いがする青い海の方が良いと説くシーンが象徴的だ。コミュニケーションをとるよりも、一人でいる方が何もかもシンプルだ。だが、複雑で面倒な関係を築くよう、制作者は繰り返しメッセージを送る。
キャラクターや設定が、TV版に比べ、複雑化している。上記の変化を導いたレイの計略は少々ウェットにすぎるし、変化の結果、駒が足りなくなって、新キャラが必要になった。新キャラのマリはレイやアスカのように分かりやすい性格ではなく、キャラが立っていない。TV版の方が、設定的には洗練されていたように思う。
だが、それら何もかもが、複雑さを志向した変化であるという点で制作者の考えは一貫している。そのことを私は支持する。
個々の演出では、携帯音楽プレイヤーの使い方が絶妙で、泣きそうになった。また、「今日の日はさようなら」は鮮やかな衝突の技法(逆の要素を重ねることで、個々の要素を際立たせる)なのだが、あまりに効果的すぎるように感じた。
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