ファウストvol.4 感想



 始めにちょっと気になったことを。
vol.1 25%
vol.2 43%
vol.3 56%
vol.4 33% 
 掲載小説中、メフィスト賞出身作家以外の作品が占める比率である。言わば外様比率と言ってもよい。ファウストの大きな魅力は「おおっ、こんな作家の原稿を取って来たか! 」という「何が飛び出すか分からない」感なので、このまま外様比率が低空飛行を続けるようだと雑誌としてじり貧になるだろう。
 もう一つ気になるのが、今まで一度ももっぱらライトノベルレーベルで書いてきた作家の原稿を載せていないこと。私が編集ならまず桜庭一樹さんに原稿を頼みに行くけどなあ。秋山瑞人さんなんか頼まれれば書くと明言しているのに。ファウストのもう一つの魅力は「うちらの雑誌」だという親近感なので、ライトノベルファンに「ああ、ミステリーと純文学の雑誌なんだ。」と認識されると売上は半減するだろう。

 で、感想。まず「文芸合宿」の感想から。「上京」がテーマの競作は東浩紀さんと逆の感想だった。東さん絶賛の「子供は遠くに行った」はつまらない訳ではないが、乙一さん本来の実力(「はじめ」や「F先生のポケット」など)は発揮出来ていない。上京とからめて用いられたモチーフも、男性作家が文学的なものを書こうとするとき安易に使いがちなものだし。
 一方、佐藤友哉さんの「地獄の島の女王」はこれっぽっちも期待していなかったのだが、展開が早く、構造もかっちりしていて面白かった。こういうのも書けるけど、普段はあえて文学的にするべく煮え切らない話を書いているのか。
 リレー小説は完成度が高くてびっくり。何も言われずに読んだら一人の作家が書いたと思うかも。でもどうせなら最初はトリッキーな学園物だったのに、いきなり絶海の孤島に旅行に行って密室殺人が起こり、探偵として妹がわらわら登場し、それが実は脳内彼女で、能力者バトルを始めたりするような個性発揮しまくりの破天荒なのも読んでみたかった。

 その他では、舞城王太郎さんのミステリーなんてくだらないシリーズ「夜中に井戸がやってくる」に引き込まれた。やっぱり上手いね。「廃線上のアリア」は二人ともその場所を精度良く割り出せないので、成功確率は1%もないのでは。
 巻末の「名探偵夢水清志郎事件ノート」には見事にやられた。このトリックは小説よりも漫画向きですね。


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