最近の東雲
ジブリ美術館に行ってきた
残暑も厳しい火曜日、僕はジブリ美術館への道を歩いていました。
仕事が忙しくてなかなか取れなかった夏休みがようやくとれた僕は、さっそくローソンでチケットを予約し、朝早くからこうして三鷹にやってきたのです。平日だけに、ジブリ美術館へ向かう人も僕だけみたいです。道の隣を流れる玉川上水からの涼しい空気と、道路からの熱い空気が混じり合って、生温かい感じです。行く途中の電車で『撲殺天使ドクロちゃん』を読んでいたので、何だか思い浮かぶ文章も丁寧体になってしまいます。
十五分くらい歩いたでしょうか。ようやく、目指すジブリ美術館に到着しました。そこにはこう書いてありました。
「休館日。毎週火曜日は休館です。」
ええっ、だって、チケットは今日の日付だよ。僕はチケットを取り出しじっと見ました。
一日間違えていました。
しかたなく、僕は明日行く予定だった国会図書館に向かったのですが、それは別の話です。
翌日、僕は再び都心を横断し、ジブリ美術館へ向かいました。三鷹駅前のバス停は、ジブリ美術館へ向かう親子連れでぎっしりと混み合っています。会社や学校を休んで来るなんて不真面目な奴等です。
美術館の入り口には長い列が出来ていました。僕の前に並んだのは中国人のおたく集団で、コンパクトなデジカメでさかんに写真を撮っています。後ろにいるのは女子大生の二人連れで、「友達が卒業してから一年間ぶらぶらしようとか言っている。」とモラトリアムな話をしています。他にも、幼子を連れた家族はもちろん、カップルや西洋人、お年寄り、など実に様々な人が入り乱れています。さすが世界のジブリです。
美術館は中央が吹き抜けになっていて、天井の大きな扇風機が淡い影を落としています。美術館は三階建てなのですが、普通の階段やエレベーターの他に小さな螺旋階段がついていたり、橋が係っていたりするし、テラスを回っても行き来出来るようになっており、静かな止まった空間にしたくないという宮崎駿さんの
意図が感じられます。
展示はアニメーションの仕組みと、製作行程を説明した常設展と、「アルプスの少女ハイジ」の特別展。 製作行程の説明で、昔と今とで変わったことの説明が面白かったです。(昔はアニメーターと彩色の女性との間にロマンスが多かったが、完全分業になってしまって仲が悪くなったとか。)
ミニシアターでは『コロの大さんぽ』という短編映画を上映していました。動かして気持ちを伝えるというアニメーションの原点を見据えたような作品で、自分の小説は余計な要素が多すぎるのではないかと反省しました。子どもとお母さんが、「コロが帰って来た!」「良かったねえ。」とか言いながら見ていたのが微笑ましかったです。
外のカフェでホットドックと麦茶を買って食べていると、良い風が吹いてきました。明るい色使いのテラス全体が木陰になっていて、その下で思い思いに過ごす子どもや若者や大人やお年寄りや男や女やアジア人や西洋人をぼーっと眺めていました。宮崎さんが何故映画というフィクションだけでなく、美術館を造ろうと思ったのか分かった気がしました。麦茶を飲みきって、溶けた氷を啜り、またぼーっとして氷水を啜り、立ち上がりました。良い休日でした。
(05.9)
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