へちょい新人でもデビューさせるべきか
ライトノベル関連のオフ会でしばしば話題になるのがレーベルの今後だ。そういう時、しばしば某レーベルが槍玉に挙げられる。そのレーベルは全体的に駄作が多いという意見が多いのだが、中でも、新人のレベルが低いと言う人がいる。こんなレベルの新人に賞を与えてデビューさせているようでは、レーベルの将来も暗いという意見だ。私はその文庫の新人賞受賞作をあまり読んでいないので、何とも言えないのだが、仮に新人賞応募作のレベルが低かったとして、受賞作なしにしてレーベルの品質を守る方が良いのだろうか。私はそうは思わない。
「死馬の骨を五百金で買う」という中国の故事がある。
燕王が臣下に千金を与え、一日に千里を走る名馬を買いに行かせた。するとその臣下は死んだ名馬の骨を五百金で買って帰った。怒った王に臣下は答えた。
「この噂が広まれば、死んだ馬でさえ五百金で売れたのだから、生きている馬ならもっと高く売れるはずだと、天下の人々が王に馬を売りに来るでしょう。」
はたして中国各地から名馬が集まり、王は三頭の千里馬を得た、という話だ。
この故事に従えば、へちょい新人の作品でも出版し、しかも次々と本を出させたならば、
「こんなへちょい新人でも高く買ってくれるのだから、才能ある俺のことはより厚遇してくれるはずだ」
と考えた逸材が次々と応募し、レーベルは活性化するだろう。
実際問題、層の厚い電撃文庫などで受賞しても、中々目立てないが、書き手の不足しているレーベルなら、いきなり看板作家として活躍できるのだ。目端の利く応募者ならこれを見逃すはずがない。故に、長期的に見れば、レーベル間の格差は解消の方向に向かうはずだ。実際、今は天下を獲っている電撃文庫だって、上遠野浩平氏が受賞するまでは、目立たないレーベルだったし。
唯一の問題は、層の薄いレーベルはレーベル自体が消えてしまう可能性があることだ。結局のところ、レーベルの盛衰は出版社がすごい新人を引き当てるまで我慢できるかにかかっているのかも知れない。
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