活字倶楽部2005春号 感想
巻頭大特集は「「上遠野浩平」を始めよう」。スペシャルインタビューについている上遠野さん本人によるツッコミ解説が面白い。インタビューからは、上遠野さんがシリーズ毎に明確に違うことをしようとしているのが分かり、感心した。上遠野作品は何となくキャラクターがドライだが、「キャラクターが膨らんでも、ストーリーを修正しない」と発言されていて得心した。キャラクター小説じゃないのかも。新作「ロストメビウス」はいまいちぐっとくるものが無いなあと思っていたのですが、作者は「変な作品を書こうと思っていた」とおっしゃっており、なるほど、へんてこ小説として見ればこれはなかなかである。「ブギーポップ」は大ヒット作なので、変だという観点からは評価していなかったのだが、盲点だった。
上遠野作品はストーリーが断片的なので、読んだはしから内容を忘れていってしまい、作品同士のリンクなんてもう全然分からないので、「超マニアック企画 上遠野ワールド推定年表」には感心した。
「4号連続企画 佐藤友哉'05」では「零崎ってたいしたことないじゃん。だって弱いし武器はハサミだろ、俺でも勝てる!」とか電話のたびにいっていたら、逆に――」という話にうけた。佐藤さんは売れないというのが芸風になっているが、純文学作家としてはとても売れていると思う。
ライトノベル好きを自称していながら角川ビーンズ文庫は完全なブラックボックスになっている私にとって、特別企画の紹介は有難かった。かつくらって特集が五本くらいあるので、お目当ての企画以外の作家を知ることが出来るのが面白い。クラフトエディング商會を知ったのも森博嗣特集でだったし。
他には、「ブルボン小林のニューぐっとくる題名」が面白かった。それはそうと長嶋さんは何で別筆名を使っているのだろう。純文学作家はゲーム評なんか書くなという雰囲気がいまだに残存しているのだろうか。
キャラクターランキングや投稿を見る限り、かつくら読者は九割以上が女性だと思うが、BOOK REVIEWは現代文学やノンフィクションからボーイズラブまであらゆるジャンルを網羅しているところが素晴らしい。以前、太田克史さんが、今、上遠野浩平を特集した雑誌がどこか覚えておきやがれ、みたいなことをおっしゃっていたが、かつくらは前世紀からあらゆるジャンルを平等に扱ってきたし、上遠野特集も三回目である。「活字倶楽部」は「ファウスト」の三倍えらいと勝手に認定したい。
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