私は如何にして難癖をつけるのをやめ、ツンデレを愛するようになったか――奇蹟の表現II 感想
私はツンデレに疑念を抱いている。
知らない人のために一応説明すると、ツンデレとは普段はツンツンしているのに好きな人の前ではデレデレするキャラクター(普通女の子)のことで、最初はツンツンしていたけど、親しくなるとデレデレしたり、人前ではツンツンしているが、二人っきりになるとデレデレしたりといった様々なバリエーションがある。ライトノベル周辺ではツンデレキャラが全盛で、シャナとか御坂美琴とかアリソンとかヴィクトリカとか桜野タズサとかとにかく沢山いて人気もある。
で、私が何に疑念を抱いているかというと、ツンデレキャラは意中の男を篭絡するために、わざとツンデレを演じているのではないかということだ。ツンデレの魅力はツンツンとデレデレのギャップにあるわけだが、恋愛にうぶなため、感情がうまく制御できていないが故にそうなっているという前提がある。好きな人の前でしおらしく振る舞えば良いにも拘わらず、ツンツンしてしまい、恋人になるのが遠ざかってしまう不器用さがかわいいなあという訳だ。
しかしながら、女の子が男の子を落とす戦略を練るとすると、ツンツン、デレデレ、ツンデレの内、最も有効なのはツンデレである。なにせツンデレキャラがこんなに人気があるくらいだから。ということは、ツンデレキャラが不器用が故にツンデレになってしまっているのではなく、「ふふふ。ツン、ツンと来たからここらでデレを投入して揺さぶりをかければ篭絡するのも目前だ。まったくうぶな男を誑かすなど赤子の手を捻るようなものだわい。」などと計算してツンデレを演じている可能性が捨て切れないのだ。そこまで自覚的に計算していないにしても、無意識のうちにやっているというのはありそうだ。
そもそもツンデレキャラは作るのが簡単だ。まず主人公に些細なことで怒ってみせたり無愛想にさせたりしておいてから、手が触れたり、ちょっとからかわれただけで顔を真っ赤にしたり、「な、何を言うのよ・・・」とかどもらせたりすれば、それだけでそこそこ魅力的なツンデレキャラができてしまう。それ故にツンデレキャラは粗製濫造になりやすい。そうなると、読者がツンデレに飽き、折角の魅力的なツンデレキャラまで共倒れになってしまう。だから、ツンデレキャラを作る作家には、何かひと工夫して欲しいのだ。
そこで『奇蹟の表現II 雨の役割』(電撃文庫)ですよ。ヒロインのナツは一巻ではツンツンキャラなのだが、二巻でツンデレに変わる。で、ツンデレのセオリーに従って頬を真っ赤に染めるのだが、重要なのは、真っ赤になっているのが思い人の前ではなく、第三者の前なのだ。つまり、このデレは戦略的に全く無意味なデレであり、すなわち真に感情を制御できず、不器用が故のデレなのだ。これは盲点だった。
素晴らしきかなツンデレ!
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