このライトノベルがすごい!文庫の新人賞受賞作感想
宝島社から献本をもらっているのに全然感想を書いていないので、四冊まとめて感想。ネタバレを含みます。
第二回なろうコン大賞
まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる 紫炎
すごく感動的なわけでもすごく笑えるわけでもすごく泣けるわけでもないが、そこはかとなく面白く、くいくいページを繰ってしまう不思議な小説。小説を読んでいるというよりゲームをプレイする面白さに近い。
朱き強弓のエトランジェ 只野新人
小説家になろうと言えば軽妙に描写をはしょってさくさく話が進むという印象があったのだが、本作は重厚な描写でひたすらシリアスな話が続くという異色作。今後伏線として生きてくるのかどうか分からない村の細かな人間関係に至るまで世界全体が作りこまれており、読ませる。
第5回「このライトノベルがすごい!」大賞
着ぐるみ最強魔術士の隠遁生活 はまだ語録
「魔法科高校の劣等生」のお兄さまが内向的でよく悩むような性格だったら…といった内容。登場人物達が強い思いを発露する箇所ではぐっと心を掴まれた。ただ、登場人物達が無駄に遠回りしている印象がある。敬心を悪者にすればもっとすっきりした話にできたのでは。
[急募]賢者一名(勤務時間は応相談) 勇者を送り迎えするだけのカンタンなお仕事です 加藤雅利
今年一番笑った小説。「はたらく魔王さま!」等につらなる現代へっぽこ勇者ものなのだが、次々登場するへっぽこエピソードに電車で読んでいて笑い声を抑えるのが大変だった。また、ギャグが非常に知的で(こころのKのような点だからK点等)、作者の深い教養が伺える。
二つの新人賞を比べてみると、「このライトノベルがすごい!」大賞は一冊で話をまとめているのに対し、なろうコンは長大な話の一部を切り取ったものなので、回収しきれていない伏線を多く含んでいる。なろうコンのような試みは従来の新人賞ではすくい上げられにくかった大長編物語作家を拾い上げられるという点で意義がありそうだ。
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東雲製作所評論部(感想過去ログ)