ライトノベルを書く! 感想



 『ライトノベルを書く! クリエイターが語る創作術』(ガガガ文庫編集部・編、小学館)は小説の書き方を説いた本だが、教えていることはただ一つ、「書き方は人それぞれ」だということだ。
 賀東招二、川上稔、桑島由一、新城カズマ、鋼屋ジン、山下卓、清水マリコ、野村美月というメンバーへのインタビューが掲載されているのだが、人選がバランス良い。しかも、共通した質問が多いので、彼らの違いがはっきり分かる。
 プロットの作り方をとっても、プロット作成が実作業の六〜七割という新城さんや荒プロットを書いては捨てをイヤになるほど繰り返すという川上さんがかなりプロット段階の計算を重視しているのに対し、プロットは作らずにひとつの情景描写から膨らませていくという山下さんや前半とクライマックス、それと書きたい場面、書きたいエピソードだけきめてあるぐらいという清水さんは正反対の立場を取っていて、それが明らかに作風に反映されているのが面白い。
 掲載されたイラストや、創作のための読書案内で紹介されているライトノベルを見ても、編集部が多様性を求めているのが分かる。これでスーパーダッシュやファミ通よりもっと書き手の自由度が高いライトノベルレーベルという定評が固まれば、飽和状態のライトノベル界に割って入れるかもしれない。

 乙一さんの書き下ろし小説とそのメイキングが載っているのだが、何度も何度も推敲しているのが印象深い。しかも推敲するたびに確実に良くなっているのだ。乙一さんほどの人がこれだけ繰り返し推敲しているのだから、自分などはこの倍は時間と労力をかけて推敲しないと駄目だと思った。

 インタビューの内容では、川上さんが、文章には作者の感情、解釈を入れる叙情系と入れない写実系があり、自分は写実系だと語っているのが印象深い。私は秋山瑞人さんのようなここで言うところの叙情系の作家に比べ、川上さんは文章にこだわらないタイプなのかと思っていたのだが(ごめんなさい)、確かに、作者の解釈を入れない方が困難に挑んでいる分だけ志が高い文体だと思う。
 あとは、ファンとして、野村さんが学生時代に書いた『赤城山卓球場に歌声は響く』の原形などの習作を見ると、本当にこの人は物語が好きなんだなあとうれしくなった。



トップページに戻る