本当はこのライトノベル評論(?)「超」入門がすごい! 感想



 ライトノベル関連本を三冊読んだので順にレビュー。
『ライトノベル「超」入門(新城カズマ著、ソフトバンク新書)』
「さらに、実際に数えてみたところ、ライトノベルは非ライトノベルに比べて際立って会話文が多いわけではない・・・・・・という定量的報告が、インターネットの某サイトで発表されたこともあります。」
某サイト→ライトノベルは会話が多いか

と言う訳で、この一文だけで私的には買う価値があったのだが、それ以外も興味深い。
 基本的に勢い良く書かれているので、資料的厳密性には欠ける所もあるのだが(例えばメガネっ娘の例として保科智子が、委員長の例として読子・リードマンが挙げられているが、どっちかというと逆じゃないか、とか。)、博識を元に縦横に展開する話が面白い。『南総里見八犬伝』はイラストで売れてた部分もかなりあると思うとか、ひたすらセリフが続くシーンの例として『三銃士』を引いてきたり、量的緩和政策に疑問を呈したりといった話の広がりは類書には見られなかったものだ。
 特に、ゲームによって
「「近代文学のキャラクター=何かを選択し、決断する、内面やら人格やらを持った人物」
というやつは、
「ゲーム的世界観の中のキャラクター=(任意の状況における)所作事や決め台詞の束」
へと再解釈されなくてはいけなかった。」
とゲーム的リアリズムを明快に整理している個所と、
おたくの本質が邪推だと断じ、邪推が向かう先の「束縛/従属/偏愛」がフランス革命の「自由/平等/同士愛」とぴったり反対のところに位置している
と分析している所に感心した。


『本当はこのライトノベルがすごい!2006(東京大学新月お茶の会)』
メインのBEST10は、売れてるものとも書評家が誉めているものともちょっと違う、エッジの効いたラインナップになっていて、他のランキングの補完としては優れていると思う。
本家「このライトノベルがすごい!」のランキング分析も載っているが、この平均点を用いた分析を最初にやったのは読丸さんなので、一言言及しておく方が礼儀正しいと思った。


『ライトノベル評論(?)VOL.2,3(MTI)』
vol.2はオススメライトノベルリスト・本書厳選38作品レビュー。『本当はすごい!』がナックルならこちらはストレート。王道のセレクトだ。書評もきっちり内容とおすすめどころが分かるのが揃っているのだが、とちらかというと、私は細谷さんの『ヤングガン・カルナバル』の書評(大藪春彦賞の葉書が来る限り、私は深見真を押す、と宣言)のように作品への愛が溢れまくっているようなやつの方が好きなので、もっとはっちゃけてほしい。
VOL.3の方は座談会と講演録。特に巻末の榎本秋さんの講演は、口絵をつけると普通、定価が数十円上がるとか、部数の話とか、アマチュアには降りてこない具体的な話が多くて興味深かった。座談会は、「だから、復活しなくていいよ。」といった本音トークが炸裂していて、オフ会を横で聞いているような楽しさだった。



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