ライトノベルめった斬り! 感想



 ライトノベル関連本が雨後の筍の如く出る中で、真打登場! という感じなのが、この『ライトノベルめった斬り!(大森望・三村美衣著)太田出版』だ。ライトノベルというジャンルが書評で完全に無視されていた前世紀。何でこんな傑作が満天下に知らしめられないんだ! と歯がみしていた私に取って、ライトノベルを書評でばんばん紹介してくれた大森さんや三村さんはヒーローだった。と言う訳で、本書も、前世紀までの部分が特に面白い。聞いたこともなかった古典名作がどかどか紹介されていて、しかもその紹介文が「ねえねえ、これ面白いよー。」と語りかけてくる感じなので、古本屋に行くのがより楽しみになった。
 反面、現代に関しては(特に大森さんは)掴み損ねている感じ。ライトノベルの中心はまだ電撃じゃなくて富士見だろうとか、2chライトノベル大賞はむしろライトノベル読者の大勢にはうけていないものが獲りがちなのではとか。しかし、「完全読本」や「すごい!」と違ってこれはたった二人で書いているんだからそんな何もかも望むのは酷というものだ。
 ブックガイドパートでは取り上げた本を「文章、ストーリー、キャラクター、世界観、オリジナリティ」の五項目で採点しているのだが、面白かったのは文章の採点。低く見られがちなあかほりさとるや神坂一の文章を結構高く評価しているのに好感を持った。一方で、川上稔、あざの耕平、甲田学人などの点は抑えられていて、ああプロの読みだなあと感じた。
 対談部分で面白かったのは『みなごろしの学園』をめぐる論争。「いやあ、これは面白かったな(笑)」と言う大森さんに対し、「小説を読んで、こんないやな思いしたの久しぶりですね。」と三村さんが真逆の評価で盛り上がる。ちなみに私は断然三村派。こういうマッチョな思想になさけなく異議を唱えるのがおたくの矜持というものです。
 余談だけど、最近思うのは『るろうに剣心』ってすごく時代を先取りしていたなあということ。志々雄真実が言ってたことって、当時は突飛な感じだったけど、今はラムズフェルドとかが現実に行ってるもんなあ。比古清十郎はひきこもりだし。


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