水野良×冲方丁トークショーレポート



 秋葉原エンタまつりの『水野良×冲方丁トークショー「新しい世界と物語の作り方〜スニーカー文庫とファンタジア文庫」』に行ってきた。開始の三時間も前に整理券を配布したので、始まるまで時間を潰すのが大変だったが、整理券配布開始の一時の時点では25人くらいしか並んでいなかったので、もうちょっと遅くに行っても大丈夫だったようだ。CAXさんやタニグチリウイチさんがいらしていたようだが、顔を存じ上げないので分からなかった。

 最初にザ・スニーカー編集長の野崎さん(ひげに眼鏡)とドラゴンマガジン編集長の工藤さん(ホスト風)が登場され、水野さんと冲方さんがザ・スニーカーとドラゴンマガジンの両方で連載しているという説明をされたのに続いて、水野良さんと冲方丁さんが入場された。全体的に、水野さんがサービス精神旺盛に色んな裏話を披露されると、冲方さんもそれに呼応してどんどん話され、笑いの多い、楽しい座談会だった。
 以下に主な対談内容を記すが、メモをとっていただけなので、言い回しとかは当然そのままではありません。

シェアワールドとは
水野良さん(以下水):作家が共有する一つの共通世界のこと。最も成功したのはクトゥルー。ワールドを作るのが大変なので、ソードワールドの時は仲間で作った。RPGはワールドが必須なのでシェアワールド向き。設定を作っても無視されることもあるが(ギャラクシー・エンジェルとか)、無視されることも含めて中心軸が必要。
冲方丁さん(以下冲):カメラの数を増やすために行う。一人の作家でもその方法論が使える。設定を作ると目標が明確になるのでメディアミックスしやすい。

シュピーゲルとシュバリエ
冲:編集者七人対作家一人で打ち合わせをした。説明することでブレインストーミングになった。『シュバリエ』の文中で使っている=と/は字面で使い分けている。体言止めの多様でラップ的にして密度を高めている。

連載・メディアについて
冲:連載はリアルタイムで反応がある。ザ・スニーカーでは読者からアイデアを募っている。
水:連載と書き下ろしでは全然違う。ライトノベル作家は小説家のみでなく創作者である人が多い。自分の原点はゲームだが、書けるのは小説だけなのでこうしている。濃すぎる第一世代と違って、おたく第二世代以降はメディアに対する差別がない。多くの人に読んでもらうためにはあざとさも必要だ。
冲:自分の原点は小説。確かにあかほりさんのやり方は参考になる。連載雑誌によって読者の反応が違う。
水:作家が苦労している所と読者が記憶に残る所は違う。最近は獣耳が流行っているようだが、ギャラクシー・エンジェルの会議でも、キャラクターの生い立ちなどの設定はスルーされて、語尾などの属性から決まっていった。自分は嫌いなのだが、ライバルを出すと人気が出る。また、マスコットも人気がある。だがやはり男の主人公がしっかりしているのが重要だ。
冲:連載で人気がなければ潔く止めて次にいきたい。もっともアンケートも万能ではなく、少年ジャンプのボーボボはアンケートでは最下位でも雑誌を買えない年少読者が支持しているのでコミックは売れている。
少年主人公の方が売れるのは男女共に受け入れられるからだろう。キャラクターだけ抜き出すと不自然に大人び過ぎていても、異世界の過酷な設定の中では不自然でもないこともある。

雑誌による違い
冲:ドラゴンマガジンの『スプライトシュピーゲル』では大人と子どもの縦の関係を描いており、守ってくれる大人がいることで明るい話になる。逆にザ・スニーカーの『オレインシュピーゲル』は子どもだけの横の関係を描いている。オレインでは夕霧が人気。シュピーゲルでは絵的な要素を取り入れている。両シリーズに別のイラストレーターがついているので、イラストレーターと仲良くやることが重要。
水:ドラゴンマガジンなら女性主人公でザ・スニーカーならメタルっぽい男の友情という風に雑誌によってカラーがある。以前ドラゴンマガジンで『小川の国の魔法物語』という一人称が毎回違う小説をやったが、ドラゴンマガジン的ではなかった。そこで『魔法戦士リウィ』ではドラゴンマガジンを意識して軽めの文体でキャラを立てることで受け入れられた。他の作品と同じでは駄目だが全く違っていては受け入れられない。その点、ケロロ軍曹と低俗霊DayDreamが同時に載っている少年Aはすごい。漫画雑誌は個々の漫画の雑誌に対する影響力が大きいのではないか。

最近の仕事について
水:『ロードス島戦記』は『新ロードス』で完結した。17,8年前に張った伏線を今になって回収した。雑誌と共に歩んできた実感がある。『魔法戦士リウィ』はもう少し連載が続く。
冲:11月は本三冊ゲーム一本DVD一本が発売になる。12月にドラゴンマガジンとザ・スニーカーで連載再開し、2月に文庫になる。今年は入院しなかった。



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