東雲文芸31:叙述ミステリー
嵐の山荘殺人事件
森に囲まれた山荘で死体が発見された。
町につながる唯一の道にかかる吊り橋は昨夜の大雨で流されてしまっている。ミステリーで言うところのクローズドサークル、嵐の山荘だ。
山荘のリビングには五人の泊り客全員が集まっていた。エリザベス=ホワイトが、
「犯人はこの中にいます。」
と告げると、ざわめきが起きた。
「それなら、まずは皆のアリバイを確認しなくちゃな。スーザン、君は死亡推定時刻の午前九時から十二時までの間、何をしていたんだい。」
フロイゼン=エルンリッヒ=ホッテンブルグ=シュトゥルーゼン=ブッフバルト=フォン=ピカテリーナ三世が立ち上がって問うた。
「私なら、ベティ、ヤン、フロイゼン=エルンリッヒ=ホッテンブルグ=シュトゥルーゼン=ブックバルト=フォン=ピカテリーナ三世と一緒に、遊戯室でビリヤードをやっていたよ。」
「何だ、ということは、その場に唯一いなかった、エリザベスが犯人ということじゃないか。」
ヤンの言葉にエリザベスはやれやれと首を振った。
「人の話は良くお聞きなさいな。ベティというのは私、エリザベスの愛称ですから、私は遊戯室にいたのです。いなかったのはフロイゼン=エルンリッヒ=ホッテンブルグ=シュトゥルーゼン=ブッフバルト=フォン=ピカテリーナ三世ですわ。」
「あれ、スーザンがフロイゼン=エルンリッヒ=ホッテンブルグ=シュトゥルーゼン=ブッフバルト=フォン=ピカテリーナ三世とビリヤードをしていたって言ってなかったっけ。」
「いたのはブックバルトの方で、ブッフバルトはいませんでした。」
皆が一斉にフロイゼン=エルンリッヒ=ホッテンブルグ=シュトゥルーゼン=ブッフバルト=フォン=ピカテリーナ三世の方を見た。
「確かに俺には事件当時のアリバイがない。だが、アリバイがないのは俺だけじゃない。」
ブッフバルトが玄関の扉を開くと、百人の森さんが山荘を取り囲んでいた、中には森公美子、森博嗣といった有名人の姿も見える。
「さらに言えば、この山荘は「嵐」所有の山荘だから、大野智や櫻井翔達が裏で糸を引いている可能性もあるぜ。」
事件は迷宮入りしそうであった。
(10/04)
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