最近の東雲


プレーオフを見に行った



 私はあんまし野球に興味が無く、特にどこファンという訳でもない。しかし例えば悪漢に銃を突き付けられ、
「貴様はどこファンなんだ。答えなければ殺す。」
と言われたら、まあ千葉市民なので、ロッテファンだと答えるだろう。
 しかしながら、千葉ロッテはマイナー球団だ。成績は殆どBクラスだし、試合はたまにUHFの千葉テレビで放送するだけだ。例えば、出張で北海道や愛知に行くと、テレビでは日本ハムや中日のニュースをバンバン流している。それはその地区に球団が一つしかないからだ。しかし、関東には球団がごしゃごしゃあり、しかも関東のテレビ局は関東ローカルのくせに全国放送だと勘違いしているので、あまり関東のみの話題は扱わない。という訳で、千葉ロッテがパリーグのプレーオフに進出し、実に31年ぶりのリーグ優勝に迫っているというのに、しかも対戦相手も埼玉が本拠の西武だというのに、プレーオフ緒戦は地上波では放映されず、二戦目もちみっとしか放映しないというしょぼい状況なのだ。というか、何でニューヨークヤンキースのプレーオフの試合は放映するのにパリーグプレーオフは放映しないんだ。向こうは日本人は松井一人しか出ていないのに!
 ロッテは一戦目に勝ち、二戦目に臨んだ。私は球場まで行くかどうか迷っていた。私はロッテの選手で顔が分かるのはバレンタイン監督とジョニー黒木と村田兆治だけだ。応援団に「何やわりゃあ。もうちょっと勉強してから来んかい!」とか言われたらどうしよう。しかし、ラジオを聞くと、一対零で勝っていたので、出かけることにした。
 球場には来たが、チケットを買って入る金が惜しいので、球場前の巨大テレビの前で応援することにする。テレビの前には、数百人ぐらいが地べたに座って観戦しており、その後ろを立ち見の人が取り囲んでいる。手を振って応援しているのは、四割くらいで、残りは私のようなにわかファンのようだ。私は立って見ていたのだが、これがわりと疲れる。これなら家でテレビを見ていた方が良かったかも、と思ったが、じきに、思い直した。これは試合の妙味を楽しむのが主目的ではなく、応援するのが目的なのだ。応援している人々は、皆同じシンプルな感情を共有している。六回の裏、ロッテが連打で二点を追加した。皆と一緒にタイムリーヒットを打った今江を称える手拍子をしていると、こういうのも良いものだ、と感じた。
 試合中に、私は二度も知らない人に話かけられた。球場では人の距離が普段よりも近いのだろう。
 試合はロッテが逃げ切り、福岡行きが決定した。帰りのバスの中で後ろの西武ファンのカップルが、
「まあ、ここで負けて良かったのかもな。これで優勝したら世間の風当たりが強いだろうし。」と話していた。確かにソフトバンクは西武に二十三ゲームも差をつけているので、逆転優勝されたら、選手はレギュラーシーズンの努力が水の泡すぎて釈然としないだろう。現在は、五ゲーム以上差をつけられたら相手に一勝が与えられるだけだが、十ゲーム離されたら相手に二勝を与え(三連勝しないと駄目)、十五ゲーム以上離されたら相手に二勝、自分にマイナス一勝(四連勝しないと駄目)という風にすれば、逆転優勝されても五タテくらったんだからしょうがないか、と諦めがつくのではないだろうか。
 (文中敬称略。しかしスポーツ選手に普通敬称をつけないのは何故だろう。)
(05.10)



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