最近の東雲


正しいペンキの塗り方と枝の切り方



 五月某日、自宅の門のペンキ塗りをした。幅は三メートル程。魚焼き網のように長方形の枠に手の平間隔で縦棒が走った鉄製の門である。長年風雨にさらされ、チョコレート色のペンキはべろべろとめくれ、赤錆びが浮いている。
 まず、プラスチックのへらを使って古いペンキをはがしにかかったのだが、これが思いの他難儀であった。門はやたらと面の数が多い上に、剥がれやすい所とごしごしこすっても落ちない所が混在していて、根気が要る。数時間経っても終わらないので適当な所であきらめ、塗りに取り掛かる。こちらは剥がすのに比べると驚くほど楽ちんである。ただし誤算もあった。門の片側を先に塗ってから、裏側に取り掛かった所、裏側に滴れたペンキが既にだまになって固まってしまっていたのだ。門は表裏を並行して塗っていくべきである。

 六月某日、庭の蜜柑の木の枝を切った。蜜柑は二階の中程までの高さで、こんもりもこもこと葉が茂っている。幹に梯子を立て掛け、屋根に掛っている太い枝を鋸で切る。半分まで切った所で、腕がくたくたになり、刃も全然進まなくなってしまった。見かねた母が代わると、わずか十引き程で枝はたちどころに落ちた。流石である。その後、再び交代し、細めの枝を三本落とした。
 落とした枝は枝が何重にも分岐していてかさだかなので、枝分かれを落とさねばならない。足元のしっかりした地上で切るので楽勝かと思いきや、存外に難儀した。何故かというと、樹から枝を落とす時は、枝の自重が、鋸の切れ込みを開く方向に作用するのに対し、地上ではその力がないため、鋸の刃が両側から挟みこまれて動かなくなるからだ。

 このように、実作業をすると、卓上であれこれ思考するよりもよほど多くの知見が得られる。しかしながら、年中仕事をしていては、それがルーチン化してしまい、発見が減ってしまうだろう。やはり、家の仕事の手伝いはごくまれにするのが良い。
(06.06)



トップページに戻る