最近の東雲


旗の家



 近所に小さなアパートがある。そこの一室の住人は大層サッカー好きらしい。通りに面した窓の内側にはミニチュア版日本代表のユニホームが貼り付けられ、外のこいのぼり用の竿には八咫烏の代表旗が翻っていた。日本代表が敗退した朝も、代表旗は力無く垂れ下がっていた。
 そんなある日、アパートの前を通りかかった私は思わず足を止めた。日本代表の旗は仕舞い込まれ、代わりにブラジル国旗がベランダに張り出されているではないか。確かにいつまでも敗れ去った日本代表を応援していてもしょうがない。この一家はワールドカップをポジティブに楽しんでいるのだ。
 ところが再び悲劇が襲った。ブラジル代表が敗退したのだ。私はにやにやしながら、件の家の前を通り、再び意表を突かれた。今度はブラジル国旗が取り払われ、イタリア国旗が掲げられているではないか。何という素早さ! しかし話はこれでは終わらなかった。数日後、イタリア国旗の隣にフランス国旗が出現したのだ。決勝はイタリア対フランスだから、これでどっちが勝っても安心だ・・・・・・ってあんたらイタリアを応援してたんじゃないのか!
 しかし、別の見方も出来る。彼らがひたすら勝ち馬に乗ろうとしているのだとすると、確かに節操ない。しかしながら、彼らはこのような突っ込みを想定してボケて見せているのかもしれないし、その時々で優勝予想をしているのかも知れない。何にしても、私はこの一連の旗を見て愉快な気分になったのだから、彼らの意図がどうであれ、善行なのは明らかだ。
(06.07)



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