最近の東雲
高知乗り物事情
出張で高知市に行った。四国に行くのは初めてだ。羽田空港から一時間半飛ぶとそこはもう高知竜馬空港である。通勤にかかる時間と同じな上に、夜で外の景色が見えなかったので、ちっとも遠くに来た感じがしない。
バスで駅前のビジネスホテルに向かう。高知駅前で晩飯を食おうと思ったが、開いている店が無い。唯一、聞いたことのない名前のコンビニが営業していたが、パンやおにぎりなどの食料品の棚は既に空っぽで、仕方なくカロリーメイトを購入し、部屋でもそもそ食べた。県庁所在地の駅前がこんなに寂れていて良いのだろうか。
良いのである。何故なら、高知市の交通の中心は電車ではなく路面電車だからだ。高知市の交通の要衝は、路面電車の路線が集結する「はりまや橋」であり、はりまや橋のだだっ広い交差点を路面電車が行き交っている様は壮観である。
路面電車があるせいで、高知の道路は結構複雑なことになっている。狭い道では、路面電車が登場すると、片側交互通行に変わってしまうのだが、皆心得たもので、車はスムーズに流れている。また、一度タクシーに乗った時、タクシーが路面電車のレールの上を走りはじめたのには驚いた。運転手さんの説明によると、ここからここまではレールの上を走って良いというルールが細かく決められているのだそうだ。
運転手さんの話をもう一つ。高知の辺ぴな所にある某有名校は地元では監獄学校と呼ばれている。ある日、仲間のタクシー運転手が学校の側を流していると、生徒が一人手を挙げてタクシーを止め、「手持ちの金は一円も無いのだけれど、どうか大阪の自宅まで行ってくれないか。」と懇願した。運転手は願いを聞き入れ、大阪に向かった。ところが、脱走を知った学校は方々に問い合わせ、遂に大阪に向かっているタクシーが一台あることを突き止めた。学校の手のものが差し向けられ、哀れ生徒は自宅前で捕獲され、自宅に入ることなく強制送還されたという。
私もその学校の近くまで行ったのだが、橋の上から眺める海は瑠璃色に輝いて、この世のものかという美しさであった。そこは御遍路さんの巡礼の道になっているらしく、白装束で杖をついた人と何人かすれ違った。件の生徒も、歩いて逃走すれば成功したかもしれない。
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