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古橋秀之・秋山瑞人講演&サイン会 レポート



 2007.11/4に法政大学で行われた古橋秀之・秋山瑞人講演&サイン会に行ってきました。
 階段教室に百人くらいが集まっていました。司会は金原ゼミ生で『悠久展望台のカイ』の早矢塚かつやさん。
 以下当日のメモを元に起こしたレポートです。文中の敬称は原則的に略させて頂きました。

早矢塚:→早矢塚かつや
秋山:→秋山瑞人
古橋:→古橋秀之


早矢塚:金原ゼミに入るきっかけは?
秋山:規定枚数出せば単位がもらえるゼミがあると先輩に誘われて。
古橋:小説は二年が200枚、三年が250枚、四年が300枚。自分は300枚は書けないから四年の時は顔は出していたけど取らなかった。

早矢塚:お互いの第一印象は?
秋山:図書館共同読書室で見たのが最初。小説サークルと漫画同好会が仲良しだったので。
古橋:秋山は漫同の飲み会に来てやたらとなじんでいたことがあった。最初に意識したのは小説サークルの会誌にギブスンをもっと煮詰めたみたいのを書く奴がいると聞いて読んだ時。
――「電気椅子 葵星円」という同人誌がスクリーンに映される
秋山:この頃は三太郎で書いていて、HDが100Mになって100Mショックと呼んでいた。同人誌を作る時は原稿をプリンターで印刷して漫画台紙に貼って東福生のポプルスに持っていった。コミケでも売った。百部くらい刷って売れ残りは部員宅で保管していた。今はEGGドームがあってうらやましい。
古橋:普段は学食でポテトと無料のお茶でだべっていた。昼に来て八時ごろまで居座っていた。

早矢塚:金原先生の印象は?
秋山:江戸時代から生きてそう。全然変わらない。当時は先生の実家で合宿をやっていた。行くと雀卓が用意されているという噂で恐ろしいので自分は行っていないが。
古橋:もう五十代後半で学長なのにサークルの先輩みたい。大人らしくなくて良いんだということを学んだ。PC98でプリンセスメーカーをやってあれは源氏物語だなあと言っていた。
秋山:担当の峯さんが金原先生と似ていて、娘さんが芥川賞を獲った記念の飲み会の時に久しぶりに会ったら、一瞬、何で峯さんがこんなところに居るんだ! と思った。

早矢塚:古橋さんが秋山さんの小説のパロディを書いたという話ですが。
古橋:ゼミで秋山が香港で退役軍人が活躍する小説を書いたので、翌週自分が大阪で退役芸人が活躍する小説を書いて提出した。
秋山:古橋をはっきり認識したのはこの一件だった。

――「シバチン 古橋秀之」という漫画がスクリーンに映される
古橋:金原先生がこれを読んで漫画を止めて小説を書けと行った。慧眼だった。
――同人誌PENTAGRAM掲載版の「猫の地球儀」が映される。続けて「BLACK MAGIC」が映される。
秋山:自分が卒業間際の時、カプコンに入社していた古橋が電撃大賞で100万円獲って良いなあと思い、「BLACK MAGIC」を改稿して送った。
古橋:カプコンにはグラフィッカーで入社したのだが、真の絵描きの凄さに打ちのめされた。
秋山:新人研修でバナナが描けなくて、八百屋の前でじーっとバナナを見ていたと聞いたけど。
古橋:あの時は方々に欝な手紙を出していた。冬のボーナスで東芝ルポを買い、ブラックロッドを書いた。東芝ルポはルビがつけられる機種で当時の自分にはポイントが高かった。会社ではバイオハザード1の背景を作っていた。受賞後も半年間チームが動いていたので慰留され、夏のボーナスが出た日に辞めた。
秋山:自分は編集から電話が来た次の日に辞めると言った。学生の頃は読者のことを何も考えていなかった。原作つきの仕事をすることになって、読む人がいることを意識した。プロになると編集のGOが出ないと書けないので編集さんに対ししゃべらないと駄目。ただ、峯さんは最後の頃はプロットを出してもらってもその通りにならないから出さなくて良いよと言ってくれて楽だった。
古橋:秋山はわりと理路整然と話せる。自分は話せないが企画書には自信がある。三作目の「ソリッドファイター」は全三作構成で、半年かけて、2、3も書いたのに、1が売れなかったのでお蔵入りになった。それ以降はリスクの分散のため、沢山企画を投げておくようになった。自分にとって良いものであっても受け入れられるとは限らない。

早矢塚:創作術は何かありますか。
秋山:自分が読者になった時の好みが元になる。
古橋:自分は設定先行で要素を並べるのに対し、秋山は核になる部分が先でそれに付け加えていく。なので自分は落ちを決めずに書くこともある。そういう時は半分くらい詰まるけど。
秋山:自分は結末を決めずに書くなど考えられない。全何十巻の小説を書いている人は当然ストーリーを最初から決めてはいないのだろうが。
古橋:原稿が止まる時は精神的にまずくて止まっているのであって、スタイルの問題ではない。最近は毎日踏み台昇降運動をしている。踏み台こそが僕をステップアップさせている。
秋山:PC98DX時代からノートパソコン・家具調コタツ・座椅子で書いているのでこの環境じゃないと日本語の長文入力ができない。だが、この環境は腰に悪くギックリ腰になった。
古橋:出版社の六人用くらいの会議室で書くと原稿が進む。原稿に詰まると会議室をぐるぐる回り始める。体を動かすことが重要だ。
秋山:自分は台詞を口に出して言ったりするのでとても無理だ。アチョー! とか。
古橋:自分も悲しいシーンではさめざめと泣いたりする。ぐるぐる回る作家を六人集めて、詰まったら一斉にぐるぐる回ったらどうか。
秋山:執筆合宿は楽しそうだが、自分は無理だ。会議室で書いていたら編集者が入ってきたりするでしょう。
古橋:回りに人がいる時は格好よくカタカタ書いている俺になっているから大丈夫。

早矢塚:新作ドラゴンバスターについて教えて下さい。
秋山:家が近所でなめた口を聞ける作家はなかなかいないので、いつか合作をやりたいと思っていた。
古橋:二人でだべっていて、中国もののアイデアが出たのが最初。現代物だと風化するので。また、自分はパラディーを書くのが得意なので合作には向いている。二人の売り上げをそれぞれ1とすると、二人で書けば相乗効果で2.2くらい売れないかという公算があった。筆の遅さを二人でカバーするはずだったが、結果的には二人とも遅くなってしまった。
秋山:なかなか企画が動かなかったので自分が先に書き始めた。ポイントは「嘘」中国という所。三国志の知識はコーエーのゲームだけだし、金庸も読んでいない。いっそ読まない方が良いんじゃないかと思っている。
古橋:金庸は全作品を持っている。合作だと資料探しの手間が半分で済むというメリットもある。この企画のポイントは前の人が書いたものを否定してもOKということ。これは親しくないと出来ない。

早矢塚:読者に向けて何か。
秋山:ドラゴンバスター、来春発売に向け執筆中です。
古橋:自分は比較的読者に好かれるタイプだ。
秋山:DS電撃文庫やアニメはノータッチ。自分が原作つきを自由にやらせてもらって有難かったので。


質疑応答
Q:EGコンバットとミナミノミナミノの続きは?
秋山:EGコンバットは上下巻バージョンと三巻バージョンで一度書ききっている。その後全四巻になって三巻までに三巻分のネタを書ききってしまった。どうしても読みたい方はメディアワークスに就職すれば峯さんのパソコンに残っている上下巻バージョンと三巻バージョンの結末を読めるかも。ミナミノミナミノはタイミングが合えば。

Q:何であんな怖い顔の近影なのか?
秋山:自分でデジカメで撮ってフォトショップで加工した。三パターンくらいある内からあれが選ばれた。変えるのがめんどくさいので。

Q:枚数制限6枚の小説を書かなくてはならなくなったのでアドバイスを。
古橋:短いのは得意。日記の面白エピソードを抜き出したらどうか。

Q:ダヴィンチの刊行予定に載っていた詳伝社のヒーローものというのはうんこマンのことか?
秋山:別物だ。他社のはなかなか生産が追いつかない。

Q:自分は短いのしか書けないが、どうやったら長くできるのか?
古橋:短編の主人公とかを共通にして長編に見せかけるべし。

Q:創作の原動力は?
秋山:……プレステ? ファンレターも最近はめっきり減ったし。
古橋:俺は元々めっきりだよ。バイオリズムがあるのでスランプもいずれ抜け出せる。ここ二ヶ月ずっと詰まっていた小説を昨日三日間で書き上げた。

Q:就職すると時間がないが、どうやって執筆時間を作ったのか?
古橋:応募作は寝ないで書いていた。

Q:桜庭一樹等の越境作家についてどう思うか?
古橋:この先も越境する人も留まる人もいて個人の問題だと思う。ラノベから別方面へのルートができたので、ラノベに人材が入って来やすくなった。
秋山:ハードカバー路線の話は以前からあった。ラノベだけだとパイの奪い合いになってしまうので。

Q:人生のテーマソングは?
秋山:あまり音楽は聴かない。
古橋:自分も音楽をかけると書けない。ノイジーキーボードという音が出るキーボードを使っていて、格ゲーのパンチキック音が鳴るようにして、格ゲーの音楽を流していたことがあった。最近はネットに上がっている初音ミクを聞いたりする。

Q:猫の地球儀は女の子がクリスマスだけで大丈夫だったのか?
秋山:峯さんから表紙用に一人女の子を出すよう言われた。
早矢塚:でも元の猫の地球儀には女性が出てきますよ。
秋山:全然忘れていた。あれは元になっただけで別物。

Q:おすすめのゲームは?
秋山:カンパニーオブヒーローズ。
古橋:エースコンバットが面白そう。

Q:俺はミサイルは?
秋山:おそらくもう一本書き下ろして単行本。

Q:イリヤに昔のペンネームが出てくるのは?
秋山:どうでもよいキャラには知人の名前を使ったりしちゃうので。


終了後、お二人からサインを頂きました。どうも有難うございました。




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