最近の東雲



対Bonanza戦の勝利と楽しむ人工知能



 遂にBonanzaに勝った。 Bonanzaとは2006年第16回コンピュータ将棋選手権で優勝した将棋のフリーソフトである。 Wikipediaによると、その実力は奨励会三段レベルであり、渡辺竜王相手に善戦したほどのプログラムである。奨励会とはプロ棋士養成組織のことで、三段の次の四段はプロである。奨励会三段レベルのソフトに勝ったということは私の実力は四段並、即ちプロ並ということに。ぐわっはっはっは! などという訳はなく、からくりがある。

*からくり1:待ったをした
 見事な十字飛車をくらって逆転されたので、一回待ったをしてやり直した。
*からくり2:Bonanzaの持ち時間を1分。切れたら一手一秒にした
 どうも持ち時間1分切れ負けや持ち時間なし一手一秒にはできないようなので、これが最も厳しい持ち時間である。もちろん人間側は考えたい放題。
*からくり3:MEM12に設定した。
 Bonanzaが使うメモリ量を最低に設定した。

 と、Bonanzaを最大限弱くして戦ったのに、数十連敗し、このたび漸く一勝できたのだ。強すぎるぞ、Bonanza!

 Bonanzaは保木邦仁氏が趣味で作ったソフトであり、ひたすら強くすることを目的に開発されている(と思われる)。しかしながら、商用ソフトの場合、買った人が負けてばかりでは面白くないので、むしろほどほどに弱い方が良い。Bonanzaは九割がたの将棋ファンにとっては既に強すぎるプログラムなのだ。

 人間の生きる目的は大きく分けて二つある。何かを為すことと楽しむことだ。人工知能の目的もそのニ系統に分類できる。
 Bonanzaはプログラムがどこまで強くなれるかという限界に挑戦しているので、人工知能に『何かを為させる』ことを目的としたソフトと言える。一方、市販の適度に弱い将棋プログラムは、人間を『楽しませる』ことを目的としている。
 世の中には人間に『何かを為させる』ことを目的とした人工知能も存在する。例えば、googleなどの検索エンジンは人に『何かを為させる』ことを目的としていると言えよう。ところが、人工知能を『楽しませる』ことを目的としたプログラムは存在しない。人工知能に感情を持たせようという研究は存在するが、それは基本的に人間のコミュニケーション相手として、人間を『楽しませる』ことを目的として開発されている。
 全くの思いつきなのだが、人工知能を『楽しませる』研究が人工知能開発の突破口になるのではないだろうか。


Bonanzaに勝てない人のための付記
Bonanzaは終盤がプロ並なので、中盤互角に捌いたら絶対勝てない。まずは持ち時間を切らさないと話にならないので、守り倒す必要がある。
そこでツノ銀中飛車で千日手模様で粘り、Bonanzaが金銀を玉の周りに引き付けた所を狙って飛車先を逆襲して破って完封しました。
普通の将棋では、相手よりわずかに有利となるように戦うが、対Bonanza戦では、わずかに有利では逆転されてしまう。殆ど人間相手とは別のゲームに近い。

棋譜ファイルをアップしておくので、興味のある方は、ダウンロードして読むか再生してみて下さい。(拡張子がcsaだとアップロードできないので、txtにしてある)
途中、アホみたいな手を沢山指していますが、あれはBonanzaを時間攻めにするという明確な目的があってやっているのであって、
決して適当な手が思いつかなかったからではありません。ええ、ありませんとも。

(08.02)



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