最近の東雲



正しいコミケの回り方



 他のあらゆる分野と同様、コミックマーケットにもスペシャリストが存在する。彼らは、事前にカタログを隅々までチェックし、友人数名と分担を決め、会場内を忍者の如く疾走。会場の一角で戦利品の分配を行い、宅急便で送ると、疾風の如く去っていく。
 しかし、プロアルピニストがチョモランマに挑んだ記録が、高尾山を登るのに役に立たないのと同様、プロコミケストの奮戦記は、コミケ初心者にとって有益ではない。むしろ、今冬参加二回目の私のような、素人の体験記こそ有益だろう。という訳で、2008年冬コミ三日目に参加した体験を元に綴る、東雲流、正しいコミケの回り方を披露しよう。読者諸君は熟読玩味の上、明日につなげて欲しい。

鉄則1:カタログは購入しない。
本屋でカタログを購入しようと思ったら、売り切れていた。カタログに二千円も払うくらいなら、商品の購入に当てるが吉ですよ。

鉄則2:会場には十一時半頃来場する。
この頃には入場制限が解除され、スムーズに入場することが出来る。

鉄則3:まずはお目当ての本を買いに行く。
私の場合、まずは西館の「みみっく」を購入。さてこれからどうするか。

鉄則4:外周を見て回る。行列には並ばない。
外周の壁際には人気サークルが立ち並び、すごい行列が出来ている。空いてから買うことにし、ざっと見て回る。カタログを持ってない上、無料パンフもはけてしまっているので、壁際のサークルを見ながら、その一角のジャンルを推測し、重点的に回る場所の目星をつけていく。
十二時半頃に東館に移動。アニメ系の一角が、ものすごい混みようで、行列が縦横無尽にのたくっている。今年はとらドラが大人気。なのはさんも根強い人気だ。

鉄則5:企業ブースへ移動
企業ブースへ向かう階段は恐ろしく混んでいた。西館1Fから直通のエスカレータが止まっている上、コスプレ広場前で人が滞留しているからだ。三日目ということもあり、一時半頃には企業ブース内は目ぼしい商品は既にはけてしまい、中は比較的すいていた。

鉄則6:空いてきた頃を見計らって、外周に再突入
二時頃に西館の外周に向かうと、人気サークルの新刊はあらかたソールドアウトになっているよ。お陰で無駄な出費をせずに済んだぞ。良かったなあ。あきらめ悪く、東館にも向かうが、あれほどあった行列はあらかた消え、外周は店じまいを始めているよ。帰りの荷物が少なくて楽だなあ。

鉄則7:せっかくお台場に来たのでフジテレビまで歩くと、足に過負荷がかかり、良いトレーニングになる。
フジテレビ。近くに見えてもはるか彼方。

もって他山の石とされたし。


補足として買った本の感想を
『みみっく!』(チーム八幡坂)
 536頁もあるので、読むのが大変かと思ったら、数日で読みきってしまった。短編集で読みやすいというのもあるけど、やっぱり作家が好きに書いてるだけあって、面白いんだわ。
 特に感心したのが、「ウタカイ」(森田季節)と「滅亡惑星調査記録$#801*43号(日本語翻訳版)」(平坂読)。
 小説に最も適したバトルものは何かと考えると、理論上は言葉を用いたバトルな訳ですよ。でもやる人が少ないのは、言葉と言葉を戦わせて、読者が納得できるような勝敗をつけるのが難しいから。
「ウタカイ」はその名の通り短歌バトル小説なのだが、低い点の歌は大したことなく、高い点の歌は本当に打ちのめされるようなすごい歌なのだ。森田氏のすごさは詩人のすごさなんだなあ。
 一方、「滅亡惑星調査記録――」は「ウタカイ」とは逆に、作りこまれた設定に唸った。SFマガジンに掲載されれば、星雲賞が狙えるんじゃないだろうか。しかし、これは誰が何のために日本語に翻訳したんだろう。
 もう一つ印象深かったのが「荒野の王国」(穂史賀雅也)。飛びぬけて変な部分はないのに、全体としてみるとものすごく独特な所が、いかにも穂史賀氏らしい。ハルヒのことをネタではなく、真正面から取り上げたライトノベルはこれが初ではあるまいか。

『KANPANIA Vol.1』(革命的非モテ同盟)
 雨宮処凛氏や赤木智弘氏といった大物の原稿を取ってくるなど、商業誌と見まごう出来栄え。
 巻頭論文に書かれている、「非モテ」が問題でないにも関わらず問題になっていることが問題であるという主張には賛成だ。にも関わらず、諸手を上げて革命的非モテ同盟を支持できないのは、本書に掲載されている文章がしばしば、(1)自分を笑わずに他人を笑っていたり、(2)モテに代わる価値を提示できていないからだ。
 その点、藤田直哉氏の「SF者と非モテ問題」は(1)、(2)共にクリアしており、諸手を挙げて賛同したい。

『2ばんめでもいいから』(あんあんわんこ)
とらドラ18禁本。ストーリーも絵もリリカルで繊細な所が素晴らしい。竜児の目を殆ど描かないことで、竜児の心の見えなさを表現しているのが巧みだ。

(09.01)



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