最近の東雲



近江八幡はほっぺた落ちそう



 出張で近江八幡へ行った。米原で新幹線を降りて東海道本線に乗り換えると、彦根、安土といった歴史的な地名の駅に次々停車し、わくわくする。目的地の近江八幡は、前記の都市よりはマイナーだが、豊臣秀吉の甥で秀吉に殺されてしまった関白、秀次が開いた都市で、近江商人発祥の地だという。
 近江八幡観光の中心は駅から徒歩三十分ほどの所にある。仕事が早く終わった日に散歩がてらでかけたのだが、これが想像以上に良かった。新町通りでおおっとなり、八幡堀ではにゃーんとなり、日牟禮八幡宮でほおーっとなった。この感覚を分かりやすく伝える表現はないかと、あれこれ考えた結果、思い至ったのが、「ほっぺた落ちそう」だ。ますます分かりにくいですか、すみません。
 古い商家の町並みが残る新町通りや紅葉の美しい日牟禮八幡宮も良かったのだが、最も心引かれたのは八幡堀だ。時代劇のロケが良く行われるというだけあって、景色景色が絵葉書のように美しい。岸は桜並木になっており、春はさぞかし見事だろうが、秋は秋で、しみじみとした趣がある。さらに、水郷特有のしっとりとした空気が心地よい。ここを毎日散歩して構想を練れば、たちまち風雅な傑作小説をものにできるのではあるまいか。八幡堀のすぐ側にはメンソレータムの近江兄弟社があるのだが、この環境が技術者に素晴らしいインスピレーションを与えるだろうことは想像に難くない。
 京都に任天堂や島津製作所といった世界的企業が沢山あるように、町は言葉では上手く伝えきれないような部分で、人に大きな影響を与えているのではないだろうか。

(09.11)



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