リベラルなタカ――図書館戦争 感想
『図書館戦争』(有川浩著;メディアワークス)の舞台となる図書館は変わっている。図書館の自由を守るため、武装しているのである。普通、言論の自由を訴える人々はハト派であり、武器や暴力は言論の自由を脅かすものとして嫌っている。もちろん、この小説においては、言葉の力によって問題を解決しようとするはずの図書館が、武装するきっかけとなる事件が用意されており、彼らが自衛隊並の武装に踏み切ったのも肯ける。だが、地下に潜って秘密裏に本を流通させたり、人間の盾を作って抵抗したりといった非暴力の抵抗法もあるのに、事件以前から拳銃を配備していたのだから、やはりタカ派な図書館といって良いだろう。
本作は、非常にリアリティーが高いため、「リベラルなタカ派」というのが奇異に写る。だが、良く考えてみると、ライトノベルにおいては、「リベラルなタカ派」は最も正統的なスタンスである。
ライトノベルでは、キャラクターが立っていることが重視される。様々なキャラクターが登場する方が面白いからだ。そのため、多様性は肯定される。これはリベラルな思想に他ならない。例えば、あかほりさとる氏の小説はあらゆる愛の形を肯定している。
一方、ライトノベルにおいては、一部の恋愛ものを除き、ほとんど全ての作品で暴力が振るわれる。バトルがあった方が面白いからだ。(現に、本作もバトルシーンのお陰でメリハリがついて面白さが増している。)誰かを守るためといった条件つきながら、主人公の暴力は肯定される。これはタカ派の思想そのものである。あらゆる戦争は自衛のためにおこされるのだ。
本作は抜群のリアリティとディティールを除けば極めて正当なライトノベルだ。本作を奇妙に感じるとしたら、ライトノベルが奇妙なのだ。
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