[冲方式]ストーリー創作塾 感想





 この本はかなりの上級者向けなのではないだろうか、というのが「[冲方式]ストーリー創作塾」(冲方丁 著、宝島社)を一読した感想だ。本書のメインは、「マルドゥック・スクランブル」「カオスレギオン」「青穹のファフナー」のメモや企画書、プロット等々を掲載し、解説をつけた部分であり、熱心な作家志望者なら、掲載されたプロットを元に自らマルドゥック・スクランブルを書いてみて、実際の「マルドゥック・スクランブル」と比較検討し、なるほど、こう書けばウフコックの哀しみがより強調されるのかあっ、みたいに得心する、というような使い方をすれば、実力アップ間違いなしだ。
 しかしながら、初心者はこれを読んでも書けるようにはならないと思う。具体例は一旦抽象化しないと自分の小説にそのまま生かせないからだ。殊に、冲方さんの創作法はテーマから抽象的に枠組みを構築し、そこから必要なキャラクターや舞台を設定していくという高度な論理的思考力を要求される手法なので、なかなか真似できない。小説を書こうと思った人が最初に読むのなら、大塚英志さんの「物語の体操」か「キャラクター小説の作り方」が分かりやすいだろう。
 とはいえ、「5時間目 こんな風に言われたんですが」はそのまま使える身もふたもないテクニックが多くて役に立つ。特に、「目新しさ、面白み」を出すためのテクニックとして、「その1 組み合わせましょう」「その2 過剰にしましょう」「その3 不足させましょう」「その4 逆転させましょう」というアドバイスはライトノベルらしくてとても参考になった。
 何にしても、ライトノベル業界の駄目な所を批判するばかりではなく、駄目な所を改革すべく、次々と具体的行動を起こされている冲方さんはすごいと思うし、檄文としての機能は十分に果たしている。



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