何故パウルは小森純に勝ったのか



 ドイツ、シー・ライフ水族館のマダコ、パウルがワールドカップ南アフリカ大会におけるドイツ代表試合+決勝戦、計八試合の勝敗を全て的中させたことは、驚きだった。
 一方、モデルの小森純氏も、日本の一次リーグ三試合の結果を得点まで的中させて話題となったが、決勝トーナメント一回戦の予想は外してしまった。
 何故、パウルは小森氏や他の無数の人間より優れた予想を行うことが出来たのだろうか。

 パウルが実はものすごく賢い可能性も無くはない。パウルが言葉を話せない以上、賢いかどうか完全に知ること出来ないし、人間とは全く異質の知性を持っているのかも知れない。だが、常識的に考えれば、人間の方がマダコよりも、ワールドカップの勝敗を予想するような知能は高いし、人間は、予想のための情報(チームの最近の戦績、過去の対戦成績など)を得られるというアドバンテージを持っている。にも関わらず、小森氏ほかの人間はパウルに敗れた。何故か。

 実は、一つだけパウルが小森氏より有利な点がある。それは自由に予想ができる点だ。
 決勝トーナメントの一回戦で小森氏は日本が2対1で勝つと予想した。これは一見、小森氏の自由な予想のようでいて、そうではない。何故なら、もし日本が敗退するなどと予想すれば、日本中からバッシングを受けるに決まっており、実質的には、日本が勝つとしか予想できなかったのだ。結果的に、スペイン以外の出場国の著名人は、実質的には自国の勝敗を全て的中させることは不可能だったことになる。
 一方、パウルは何者にも捉われず、自由に予想することができた。従って、ドイツのタコでありながら、ドイツの他の著名人よりは、全試合の勝敗を的中させられる確率は高かったのだ! (256分の1でも0よりは大きい。)

 そう考えると、人間は、他のあらゆる動物よりも不自由なのではないだろうか。逆に言えば、不自由さこそが人間らしさなのかも知れない。だが、命の危険もかえりみず、真実を告げたパウル氏を見ていると、「それでも地球は回っている。」と言ったガリレオのような気高さを感じてしまうのもまた事実だ。


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