文体練習の感想で文体練習――文体練習感想
27念には念を
『文体練習』(レーモン・クノー著、朝比奈浩治訳、朝日出版社)は同じ内容のバスの中で起きたちょっとした出来事を102通りの文体で書いたものである。レーモン・クノーというフランスの作家が書き、朝比奈浩治氏が和訳した『文体練習』という題名の本を私が読んだのだ。その内容はと言えば、バスの中で起きたささやかな出来事にすぎない。しかし、その同じ出来事を102通りの文体で書いてあるのだ。書いたのはレーモン・クノー氏である。しかし読んだのは私であり、私はフランス語を読めないから、朝比奈氏が日本語に訳したものを読んだのである。それも、朝比奈氏の草稿を読んだのではない。朝日出版社から出版されたものを読んだのだ。
12ためらい
102通りの文体……ええと、おそらく100ぐらい。1000はなかったと思うのですが、それくらいの数の文体が並んでいたような…… しかし、中には文体と言うよりは言葉遊びのようなものもあったようななかったような…… さらには、隠喩が極端すぎて、それだけで読んでも何のことやらさっぱり分からないものも結構多かったような気がするんですが、確かにあったかと言われるとねえ…… え?本当にそんな本があるのかって? 確か白くて四角かったと思うんですよね。豆腐? そう言われれば本ではなく、豆腐だったような気も……
43尋問
――本当に君は豆腐を読んだのかね?
――そんな訳ないじゃないですか。普通の本ですよ。装丁は凝っていましたが。
――それで、102もの文体を前に、君はどう思ったのかね?
――もしこれがフランス語の文体の限度なんだとするなら、フランス語は文体の幅が狭いと思いました。
――ほう。君は102以上もの文体を操れると言うのかね?
――もちろん、「7予言」のようにこの手があったか、と目を開かれる文体や、「27念には念を」のように極端さに笑ってしまう文体も多く、すごい小説であるのは確かです。しかしですね。半分近くは、それだけ読んでも何のことか分からないような文体なんですよ。それでは小説には使えませんよね。
――フランス語の文体の幅が狭いと言うなら、日本語はもっと広いと言うのかね?
――ええ。日本はフランスより国土が広く、方言が多い。漢字、ひらがな、カタカナが使えるので視覚的にバリエーションがつけられます。さらに膠着語なので語順を自在に変えられる。多様な文体という点では恵まれた言語だと思うんです。
――と言うことは、日本の小説は多様な文体に満ちているのかね?
――残念ながらそうなってはいません。これは自戒を込めて言うのですが、町田康氏のように極めて個性的な文体を使う作家や、清水義範氏のように、文体そのものをテーマに書いている作家は少数派です。
77女子高生
つまりぃ、何でぇ、こんなことにぃ、なってるかってぇ、いうとぉ、ほとんどのぉ、作家がぁ、文体よりもぉ、内容をぉ、重視しているってぇ、ことでしょぉ。
あんましぃ、こったぁ、文体だとぉ、読者がぁ、文体ばっかぁ、気になってぇ、小説にぃ、没入ぅ、できないわけぇ。
現にぃ、この文章もぉ、文体ばっかぁ、気になってぇ、内容がぁ、頭にぃ、入らないでしょぉ。
でもぉ、物語のぉ、内容をぉ、伝えるぅ、だけならぁ、べつにぃ、小説じゃぁ、なくてもぉ、いいわけぇ。
漫画とかぁ、映画とかの方がぁ、見るのにぃ、ちょー楽でしょぉ。
小説ぅ、ならではのぉ、ものってぇ、文体しかぁ、ないわけぇ。
文体ぃ、そのものでぇ、読者をぉ、魅了できないとぉ、映像化まだぁってぇ、ことにぃ、なっちゃうんじゃないのぉぉぉぉぉぉ。
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