東雲文芸43――書き出し小説2
デイリーポータルZ書き出し小説の没作品がまた溜まってきたので公開します。
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「遺失物捜索入ります。」
アナウンスと共に乗り込んできた駅員が、網棚からひょいと俺の鞄を持ち去った。
路地裏に古びた虹が落ちていた。
律子さんはその風貌から皆に健さんと呼ばれている。
「ゴン、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
タンスにゴンは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。→採用!
政府専用機のタラップからは誰も降りて来なかった。
機織りの音が止む。障子を開けて鶴が出てきた。目が合った。
ふと窓の外に目をやると、おかんが連獅子のように髪を振り乱しながら校庭を疾走していた。
自分のことを愚者、愚か者、街頭宣伝業者であると指摘するのみならず、敬愛する母が臍ヘルニアであるなどといういわれなき中傷を受け、小林少年は怒りに打ち震えた。
御手洗先輩の携帯電話は骨董品だ。ネットにはつながらないし、おサイフケータイや赤外線通信のような便利な機能はついていない。
当然メールは使えないし、ショートメールも送れない。さらに言うならば通話もできない。
川辺さんは雨の夜だけやってくる。
張飛率いる一騎当千の兵ども三百は、雄叫びを上げると一斉に造花作りに取りかかった。
自分の部屋で無駄に涙を流すくらいなら、あの場で泣いておけば良かった。
唇が離れると同時に雨音が戻ってきた。→採用!
ここは人間、エルフ、ゴブリン、ドワーフ、妖精、魚人、さかなクンが共存する奇跡の島。
俺の遅刻の理由を語るには、400万年前、アウストラロピテクスによる直立二足歩行の開始に遡らねばならない。
1167年、平清盛は武士として初めて太政大臣に就任し、2003年にはラストサムライが公開された。
夕立がアスファルトを叩き、夏の匂いを立ち上げた。
天国から地獄へ向かう道には壁一面に消臭剤が吊るされていた。
メロスは激おこプンプン丸だし。
世界初の紙製ダムとして有名な紙倉ダムは完成から三時間後に崩壊した。
蝋燭の炎がふっと消え、私は蝋燭になっていた。
朝、鏡を見ると、首の周りに切り取り線が入っていた。
夏が終わる頃には、七里ヶ浜に二人で作った砂の城も跡形もなく消え去っているだろう。
スイカ割りフリチン事件の思い出は夏の夜の観覧車のようなものだ。
今はもう取り壊されてしまった離れを通って母屋に向かう。小学三年生の俺がパンツ一丁でスイカにかぶりついていた。
二回採用して頂き、唇が−は月間賞候補にも選んで頂きました。どうも有難うございます。
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