最近の東雲
ハレとケの千鳥が淵
母と千鳥が淵に花見にいった。今年の都内は、満開にあたる土日が一週しかなかったこともあり、九段下の駅は、コミケのような人ごみだ。危険防止のため、エスカレーターが止まっており、人波に乗ってえっちらおっちら進んでいくと、出た所が一面の桜だった。
皇居の堀を挟んであっちに桜、こっちに桜と桜づくしだが、それ以上に人が多い。日本人が多いが外国人も多い。武道館で入学式をするらしい法政大学の職員が、ロープを張って立ち止まらないよう、声を張上げている。
皇居の堀に垂れ下がるように咲く桜は確かに見事だが、写真を撮る人が押し寄せていて、じっくり見られる状況にはない。それより、むしろ、田安門をくぐった向かいの高所にある桜が、光の当たり方とあいまって、何ともいえぬ美しさだった。
桜並木の堀沿いを歩く。ボート乗り場には、一際、人が鈴なりになっている。人は同族である人のことを好ましいと思うようプログラムされているはずなのに、ぎっしりの人は全然美しく見えないのは何故だろう。人が大勢集まっていると、脅威になるからだろうか。それとも、色彩がばらばらなのが問題で、同じ色のローブを羽織っていれば、美しく見えるだろうか。
道の反対側にあった、戦没者墓苑に入ると、空気が変わった。外がハレ、中がケとはっきりと分かれている。確かに、墓苑内は、外に比べて人が少ないのだが、それを差し引いても、空気がまるで違うように感じた。だが、それは、私が、ここが数十万人もの死者をまつった墓苑であると知っているからかも知れず、私の説を実証するためには、墓苑だと知らない人でも空気の違いを感じるか調べる必要があるだろう。
(10.04)
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