最近の東雲



フェルメール光の王国展感想



 この夏、フェルメール作品が何点か来日している。それに合わせて西武池袋本店で『フェルメール光の王国展』という複製原画展を開催していた(7/16まで)。これは、フェルメールの全作品、37点の複製原画を、制作年代順に展示したものだ。たまたま期間中、池袋に行く用事があったので、帰りに見学してきた。
 全作品を展示してあると、分かることがある。フェルメールは作品が37点しかない寡作な画家だ。寡作というからには、普段はじっと着想を練り、天啓が舞い降りるや、やおら描き始める天才型の画家なのかな、と思っていたが違うようだ。作品を通しで見ると、どれもものすごく丁寧な仕事で、作品から時間をかけて描いたのがにじみ出ている。このクオリティにして、活動期間20年程で37作ならむしろ良く頑張って沢山描いたと言えるだろう。また、「牛乳を注ぐ女」や「地理学者」のように、良くぞこの一瞬を切り取ったと舌を巻くような絵がある一方で、わりと大したことないようなモチーフも多い。フェルメールはどうも、天啓待ちの天才肌ではなく、こつこつ描き続けていた真面目なタイプの画家のようだ。
 また、フェルメールと言えば誰もが思い浮かべるのが、青いターバンをまいてこちらを振り返る「真珠の耳飾りの少女」だろう。だが、37作の内、背景を描かずに人物をアップで描いているのは「真珠の耳飾りの少女」と「少女」の二つだけであり、フェルメールの中では異色作であることが分かる。
 本展覧会の展示作品は単なる複製原画ではなく、リ・クリエイト作品と称されている。経年劣化の影響を取り除き、色彩を、描かれた当時のものに近くなるよう調整しているのだという。だとすると、その調整が上手くいっているならば、リ・クリエイト作品の方が、本物よりも本物に近いということではないか。本物の価値とは何かということについて考えさせられた。

(12.07)



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