最近の東雲
命令の多いバリウム検査
先日、生まれて初めてバリウムを飲んだ。バリウム検査に関する艱難辛苦は先達から漏れ聞いていたが、そのどれもがバリウムを飲むこと自体の苦しみか排便の際の苦しみに焦点が当てられていた。だが実際はコップ一杯のバリウムを飲むことも、その後も排便も取り立てて言う程苦しくも面白くもなかった。以前に比べて味が改善されているのかも知れないが、それにしたって単なるドロドロした液体を飲むだけのことである。それよりもその後に強いられたエクササイズの方が私にとっては何倍も強烈であった。
バリウムを飲んだ私が斜めのベッドに横になると、ガラスの向こうにいる技師が私に右を向く様指示を出した。言われた通りに体を回転させる。すると間髪を入れず「腹ばいになって」と命令が下る。慌てて腹ばいになった私に、すぐさま左を向いて、という声が飛んできた。
その後も右を向けだの斜めになれだのちょっと戻せだの横の棒を内側から持てだの立て続けに命令が下る。命令と同時にベッドがジャイロスコープのように回転し、頭を下にして斜めに吊るされたり、カメラで腹をぐりぐり押されたりする。普段全然運動をしない私にとっては、バリウムを飲むよりこちらの方がよほど大変だった。これほど短期間に立て続けに命令されたのは初めてだ。奴隷だって、こんなに連続して命令を受けたりはしなかっただろう。
サラリーマンは上司からの命令で働いている。だがそれはいつまでにこの仕事をこなせという目標が示され、目標に至る手順については各自の裁量に任されていることが多い。パン工場でひたすら苺を載せ続けるような仕事では手順に関する裁量は存在しない。だがその場合でもこの行為が何を目的としているかは明瞭である。しかるにバリウム検査は、最初の一回転がバリウムを腸内に行き渡らせるのが目的であることが説明されただけで、その後右向いたり左向いたり斜めにされたりすることの意味が全く説明されることはない。従って被験者はやることの意味がはっきりしない命令を立て続けに受け、遂行することを強いられるのだ。もしバリウム検査を丸一日ぶっ続けでやらされたら発狂するのではないだろうか。
余談だが、同じく初めて受けた腹囲検査で看護婦さんにいきなりパンツを下腹までずり下げられたのも衝撃だった。何というエロさだ!
(13.10)
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