最近の東雲
競馬場行くならレースの前に――第58回有馬記念感想
12月22日に中山競馬場で行われた第58回有馬記念を観に行った。私は競馬にはほとんど関心がなく競馬場には行ったことがない。今回出場する馬もオルフェーヴルが聞いたことがある程度だ。だが、そのオルフェーヴルがラストランだと聞いて、わりと近くに住んでいるのだから一度くらい見ておくのも良かろうと思い、出かけることにした。
3時10分頃京成東中山駅に到着。競馬場に向かう人の列ができているかと思いきや、閑散としている。競馬場行きのバスも誰も乗っていない。不審に思いながらも警備員さんに道を聞き、中山競馬場へ向かう。
道中イヤホンでラジオを聞きながら歩いていると、行く手に円柱状の競馬場の壁が見えてきた。信号待ちをしていると、ラジオからファンファーレが鳴り響いた。むっ、これは急がねば到着する前に始まってしまうぞ、と思っているとラジオで実況が始まってしまった。えーっと思いつつ急いで競馬場へ向かう。ゲートを通って中に入るとスタンドに入りきらなかった人がモニターで観戦しているのが目に入った。仕方ないそこで見るかと駆け寄ろうとした瞬間、イヤホンからオルフェーヴル圧勝! というアナウンサーの興奮した声が流れてきた。つまるところ、私は中山競馬場までわざわざ足を運んだにも関わらず、有馬記念のレースを一秒たりとも見ることができなかったのだ。馬鹿すぎる。道理で東中山駅が閑散としていたわけだ。
気を取り直してスタンドに向かうもものすごい人がぎゅうぎゅうにひしめいていてとても入れない。だが、レースが終わるやいなや帰り始めた人が出て、五分後ぐらいには入ることができた。
初めに思ったのがやたらと紙ゴミが散らばっているということだ。ハズレ馬券に加え新聞やチラシなどもそこかしこに散乱している。何というマナーの悪さだ。例えば年末にテレビ中継される年末ジャンボ宝くじの当選発表会ではずれクジをばらまいている人など見たことがない。日本においてこれだけ大勢の人がゴミを放っ散らかす場所が他にあるだろうか。帰宅後に見たテレビ中継でも紙吹雪が舞う所をばっちり写していたから競馬場黙認の行為なのかも知れない。
スタンドには特に座席などはなく、所々に低い柵があるだけのスロープだ。それが延々と奥まで続いている。観客は帰り始めたとは言えぎっしり詰まっており、一番奥の人は米粒程だ。仲間同士数人で来ている男が多く、幾人かがやたら大声で話している。「あの強さで凱旋門賞勝てないんだもんなー。」「当てたのに損してるっておかしくね。」などの声が耳に入る。柵の向こうでは大勢の緑の服のおじさん達が総出で芝の手入れをしている。
やがてモニターでは勝利騎手インタビューが始まった。モニターで見るのなら家でテレビを見ていれば良いのできょろきょろと必死に実物を探すのだが、全然どこにいるのか分からない。続けて表彰式が始まった。はるか奥の場内にピンクの服の集団が出てきたのが目に入り、あそこでやっているのだと分かるが、相変わらず顔は全然見えない。プレゼンターとして登場した田中将大選手もかろうじてシルエットが捉えられただけである。レースが終わってから競馬場に到着しても全然面白くないということが分かった。当たり前だ!
その後、反対側にあるこどもの広場などを観に行ってぶらぶらしていると、特にファンファーレが鳴り響くでもなくいきなりレースが始まっていた。何と有馬記念は最終レースではなく第10レースで、その後に第11レースが行われるのだという。何という蛇足感。相撲で言えば横綱同士の千秋楽の取り組みが終わったあとで十両の取り組みが一番組まれているみたいなものではないか。しかし格落ちレースであろうともせっかく来たのだから見たいものは見たい。慌てて近くまで駆け寄ったのだが、勝負が決まった直後しか見れなかった。あと十分でやりますよ、とか場内放送してくれれば良いのに。
しかしちょびっとながら見て思ったのが競走馬はでかいということだ。これはライブ観戦をするコンテンツとして競馬が極めて優れていることを示している。例えば野球やサッカーなどは結構大きな競技場で開催されるが、後ろの方の席では選手が非常に小さくしか見えず、テレビで見ていた方がずっと良く分かる。一方、競馬は野球場より広い場所で開催されるにも関わらず、競走馬がそれなりに大きく見える。しかも場内を駆け巡るため全ての観客の前を通ってくれるのだ。ショーとして良くできているなあと感心しながら家路についた。
(14.01)
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