動機の不在――ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q感想



(本稿は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のあからさまなネタばれを含みます。)

 戦闘描写に力を入れるあまり心の動きがなおざりになっているというのが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』を見た感想だ。最も描写不足だと感じたのはシンジが再びエヴァに乗り、槍を抜くに至った動機だ。作中ではカヲルが首輪を自分に移した行為を見てカヲルを信じ、エヴァに乗る。だが、カヲルの説明は抽象的すぎて、フォースインパクトが起こるかもという懸念を度外視してまでエヴァに乗る動機になるとは思えない。槍を抜くとサードインパクト前まで時間が巻き戻るとか、死んでしまったトウジ達が生き返るとか、レイが槍によって封印されているとか、もっと切実な理由を設定すべきだ。そうでないと、アスカやカヲルの制止を振りきってまでシンジが槍を引きぬいた理由が腑に落ちない。

 本作では、ほとんどの登場人物の動機が後半まで伏せられていたり、最後まで伏せられていたりする。シンジ視点で物語が進み、観客はシンジにしか感情移入できない。だが、そのシンジが浅はかな行動をとるため、私は誰にも感情移入できず、物語に没入できなかった。
 結局のところ、この映画はエヴァ対エヴァのチーム戦をやるとか、戦艦を変形させて空を飛ばせたら格好良いといった戦闘上のアイデアが先にあって、それを実現させるためにストーリーが組み立てられているように見える。同時上映の『巨神兵東京に現る』と同様に戦闘描写すげー、という観点から見るのが正しい見方なのかも知れない。

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