第4回『このライトノベルがすごい!』大賞感想



 (本稿は第4回『このライトノベルがすごい!』大賞受賞作の内容に触れています。)

 『このライトノベルがすごい!』大賞は例年一作はライトノベルの枠をはみ出しまくりな鬼作が含まれており全体的に何でもありレーベルな印象が強かったのだが、今年は四作ともわりと普通のライトノベルだった。

セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常 長谷川也
『生徒会の一存』以降一大潮流となっている学園ハーレム日常物。一癖あるヒロイン達による会話劇の面白さメインの作品だが、すとんと落ちる結末など小説全体としても完成度が高い。ことに「カブトムシの花嫁」のどんでん返しは鮮やか。

魔法学園の天匙使い 小泊フユキ
前半は主人公ブルンが空回りしているが、二百ページあたりから俄然面白くなる。スプーンで戦うという冗談のような設定だが、ちゃんとスプーンで戦う合理的な意味があるなど設定が練りこまれているのに感心した。

ヒャクヤッコの百夜行 サブ
ヒロインの腹にグーパンチをかます主人公って…と眉をひそめて読んでいたが、最後まで読むと主人公の変化を示す意味があったのだと分かった。描写がしっかりしているのでサクサク読める。

非モテの呪いで俺の彼女が大変なことに 藤瀬雅輝
普通に性格の良い男女がラブラブしているのはライトノベルでは珍しくてほっこりする。ヒロイン繭香が大変なことになるたびに新たな萌ポイントが付加されていくという構成が上手い。人間は何によって規定されているのかという哲学的な要素もある。

 魔法学園の天匙使いとヒャクヤッコの百夜行の二作でシーン内における視点の統一が破れている。こんなことを書いておいて何だが、止むに止まれぬ理由がない限り統一した方が良いと思うのだが。

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