死亡フラグの功罪――魔法少女育成計画restart感想



(本稿は『魔法少女育成計画』シリーズの抽象的なのネタばれを含みます。)

 『魔法少女育成計画』(遠藤浅蜊著、このライトノベルがすごい!文庫)シリーズはおそらく『魔法少女まどか☆マギカ』に触発されて書かれた作品で、どんどん魔法少女が死んでいくダークな世界観など共通点が多い。だが、魔法少女の死から受ける印象はだいぶ異なる。『魔法少女まどか☆マギカ』では劇的に死ぬのに対し、『魔法少女育成計画』ではあっさり死ぬ。この印象の違いを生んでいるのは何かというと、死亡フラグの有無だろう。『魔法少女まどか☆マギカ』では死亡フラグをばっちり立ててから殺すのに対し、『魔法少女育成計画』では死亡フラグを立てずにいきなり殺すシーンが目立つ。特に『魔法少女育成計画restart(前)』における、いきなり人生をぶつ切りにするような殺し方は、ライトノベルではなかなか見られないものだ。

 死亡フラグを立てるのと立てないのとでは双方にメリット、デメリットがある。
 死亡フラグを立てるメリットは次の二点だ。
1)キャラクターの死が劇的に盛り上がる。
2)読者が死を予感しているため、キャラクターの死を受け入れやすい。

 一方、立てないことのメリットも二つある。
1)より現実に近い。バトルで死ぬ場合は死亡フラグなど立てる間もなくいきなり死ぬ方がリアリティがある。
2)読者を驚かせることができる。

 印象としては死亡フラグを立てた方がウエットになり、立てない方がドライになる。

 死亡フラグを立てるかどうかは一長一短だが、ジャンルによってある程度傾向がある。小川一水氏や新城カズマ氏など、SF作家は立てない作家が多い。一方、ライトノベル作家はというと、そもそもキャラクターを殺さない作家が多い。殺す作家も、主要キャラを殺す時はきっちり死亡フラグを立てる。『ソードアート・オンライン』が典型的だ。立てない派の作家はというと、上記の二人もそうだが、上遠野浩平氏など、おたくの好みど真ん中と言うよりはSFなど他のジャンルとの境界寄りな作家が多い。

 『魔法少女育成計画』がライトノベルのメインターゲットというよりはライトノベル書評サイトをやっているような層に支持されているのも、この辺に一因があるのだろう。

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