2006年小説年間ベスト10




 東雲長閑が去年読んだ小説のベスト10です。ファミ通とスーパーダッシュの当たり年だったように思います。
 感想は再録です。詳しい感想を書いたものにはリンクを張りましたが、あんまし書いてませんね。
 今年は年間ベストクラスの作品ぐらいはちゃんとした感想を書きたいものです。

銀盤カレイドスコープvol.9 シンデレラ・プログラム Say it ain't so 海原零 集英社スーパーダッシュ文庫


余計なことを言うとネタばれになってしまうので、これだけ言おう。
本作ではフィギュアスケートにおける至高が描かれているが、銀盤カレイドスコープという作品自体が、エンターテイメント小説の至高であると!!
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学校の階段   櫂末高彰   ファミ通文庫   
詳しい感想は別に書いたので、細かいことを言うと、「階段の手摺に触れることは禁止」というルールなど、作者考案の「階段レース」という競技が実に良く練り込まれていることに感心した。
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カーリー 〜二十一発の祝砲とプリンセスの休日〜 高殿円 ファミ通文庫
読んでいてこんなにまだ終わってほしくない、いつまでも読んでいたいと思った小説はひさしぶりだ。
素晴らしい箇所は沢山あるが、特に「遠い昔」のシーンは電車で読んでいて泣きそうになった程で、小説でも音楽が使えるんだなあと感じ入った。
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狼と香辛料   支倉凍砂   電撃文庫   
商人が主人公のファンタジーという変わった設定で、経済小説としてもよく練り込まれているんだけど、それより何よりヒロインのホロが、ホロが、ホロが〜〜!! というわけで、かわいいというよりいとしいホロにすっかりやられてしまったのでした。
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ポロポロ 田中小実昌 河出文庫
表題作は短編にして『カンバセイション・ピース』並に感動したので、感嘆したのだが、最後まで読むと作者は「物語」を出来る限り排除しようとしているとのことなので、この感動も、作者にとっては出来れば排除したかったものなのかも知れない。
表題作以外は中国戦線の話で、淡々と描かれているのだが、どんなに戦争に憧れを抱いている奴でも、これを読めば戦争が嫌になるに違いない。
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カンバセイション・ピース   保坂和志   新潮文庫   
プロットを立てずに人類未知の領域に踏み込んでいくが故に、全く予断を許さない作者の小説はこれまではいつもさりげなく終わっていたのだが、今回は積み重ねて来た思索が最後の最後でぎゅっと収束し、高らかなフォルテッシモで終わっていることに心うたれた。

制覇するフィロソフィア   定金伸治   集英社スーパーダッシュ文庫   
哲学者が群雄割拠する小説を普通に書くと対話だけになってしまうところを、バトルと強引にくっつけて血沸き肉踊るエンターテイメントに仕立て上げたことがまずすごいが、真にすごいのは、にもかかわらず、単なる哲学うんちく小説ではなく、小説内で哲学的思索が進む「哲学する小説」になっていることだ!

TOY JOY POP 浅井ラボ HJ文庫
結論自体はそれほど斬新でもないけれど、絶望の底を確かめるようにハラキリを繰り返すような作品を書き続けてきた浅井さんがついにここにたどり着いたことを思うと感慨深い。村上春樹さんが『スプートニクの恋人』を書いたのに匹敵する事件だ。

少女七竈と七人の可愛そうな大人   桜庭一樹   角川書店   
美しいかんばせを持つ少女、七竈の一人称が息を呑む美しさで、ああ、少女を書かせたら桜庭さんだなあと感じ入った。
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月の盾   岩田洋季   電撃文庫   
作中で桜花が描いた「月の盾」のように、本作も岩田さん乾坤一擲の傑作で、人間の善と悪という重いテーマに斬り込む作者の気迫と祈りが迸っている。

他にも"文学少女"と繋がれた愚者(野村美月,ファミ通文庫)流れ星が消えないうちに(橋本紡,新潮社)などが年間ベスト級でした。



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